その16 『あの日』

天野順一朗が描く、特にオチもなんにもない、4コマ漫画風回想絵日記。

僕と妻にとって、決して忘れられない、あの日の出来事です。

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このケーキの味は、僕にとって2回目の経験でした。

1度目は1995年1月17日。前日の16日は末弟の誕生日でした。パーティが終わり、明けて翌朝のニュースの、あの倒れた高速道路の映像と、口にまだ残るチーズケーキの甘さのギャップが今でも忘れられません。

誕生日が近づくと、当然テレビからは様々な映像が流れます。妻は罪悪感からか、心の調子を崩しました。そして、仕事を辞めました。

「気にすることない」「実際に被災された方はもっと大変だ」様々なお言葉をいただきました。けれど、僕らには、僕らの「あの日」があって、そして僕らはあの震災の“当事者”の1人だと思っています。

だからこそ、無責任に忘れていくことなんか出来ません。

「つらいから」とか「悲しいから」「苦しいから」と忘れていくことは、妻にとって一番祝福されなければならない日を蔑ろにするような気がします。

僕にとって、あの日は、世界で一番のお祝いをする日なのです。だからこそ、忘れません。

妻の誕生日まで、しばらくあの日からの事を。